短時間で高い効果が期待できると人気のHIIT(ヒット)。
効率的に体力をつけたい、シェイプアップしたいと考えている方の中には、「HIITは毎日」やったらもっと効果が出るのでは?と思う人もいるかもしれませんね。
この記事では、HIITとは何か、毎日行うことの是非、そのメリットやデメリット、そして安全に続けるためのポイントについて詳しく解説していきます。
はじめに HIITとはどんなトレーニング?
まず、HIITがどのようなトレーニングなのか簡単にご紹介します。
HIITは「High-Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)」の略称です。その名の通り、非常に強度の高い運動と短い休憩(または軽い運動)を交互に繰り返すトレーニング方法を指します。
HIITの基本的な仕組み
HIITのポイントは、心拍数を一気に上げ、短い休息で回復させ、またすぐに心拍数を上げる、というサイクルを繰り返す点にあります。例えば、「20秒間全力で動いて10秒休む」といった組み合わせを数分間続けます。
運動の種類は様々で、バーピー、ジャンピングスクワット、ダッシュ、エアロバイクなどがよく使われます。
HIITが注目される理由
短い時間で完結することが、忙しい現代人にとって大きな魅力です。わずか数分から十数分で、長時間運動したのと同等かそれ以上の効果が得られると言われています。
特に、運動後の脂肪燃焼効果(アフターバーン効果)が持続しやすい点も、ダイエットや体型維持を目指す人たちから支持される理由です。
このように、時間対効果が非常に高いトレーニングとして知られています。
HIITを毎日行うのはあり?なし?
それでは本題です。これほど効果的なHIITなら、毎日続ければもっと早く結果が出るのでは?と考えるのは自然なことかもしれません。しかし、専門家の間でも意見が分かれる部分であり、一概に「あり」とも「なし」とも言えないのが現状です。
このセクションでは、毎日HIITを行うことの是非について掘り下げていきます。
「毎日やる」ことへの期待
毎日トレーニングをすれば、その分早く体力向上や脂肪燃焼が進むのではないか、という期待があります。
特に、早く目標を達成したいという気持ちが強い場合、毎日HIITに挑戦したくなるかもしれません。習慣化しやすいという側面もあるでしょう。
「毎日やる」ことへの懸念
一方で、HIITはその名の通り「高強度」なトレーニングです。体に大きな負荷がかかるため、毎日行うと回復が追いつかず、逆効果になってしまう可能性も指摘されています。
怪我のリスクや、心身の疲労蓄積(オーバートレーニング)が主な懸念点です。
結局のところ、毎日HIITを行うことが適切かどうかは、個人の体力レベル、トレーニングの強度、回復能力、そして目的によって大きく異なります。
毎日HIITを行うメリット
毎日HIITを行うことについて慎重な意見もありますが、もし適切に行うことができれば、いくつかの良い点も考えられます。
ここでは、毎日(あるいはそれに近い頻度で)HIITを行うことによって得られるかもしれないメリットを見ていきましょう。
身体能力の向上と脂肪燃焼
毎日、あるいは頻繁にHIITを行うことで、身体には嬉しい変化が期待できます。特徴的なのは、運動後もカロリー消費が続く「アフターバーン効果」です。これが継続的に得られることで、基礎代謝の向上にもつながり、痩せやすい体質作りをサポートしてくれるかもしれません。
また、心拍数を効果的に上げ下げするトレーニングは、心臓や肺への良い刺激となります。これを続けることで心肺機能が効率よく向上し、持久力アップも期待できるでしょう。
習慣化のしやすさと精神的な充実感
HIITは数分から十数分という短時間で終わるため、忙しい日々の中でも「続けやすい」と感じる方が多いようです。「毎日少しでも体を動かす」という習慣を身につける、良いきっかけになる可能性があります。
さらに、強度の高いトレーニングをやり遂げることは、「今日も頑張った」という日々の達成感や自信にもつながります。このポジティブな感覚が、トレーニングを続ける上でのモチベーション維持に役立つこともあるでしょう。
これらのメリットは、あくまでも適切な強度と休息を確保した場合に期待できるものです。
毎日HIITを行うデメリット 注意点
メリットがある一方で、毎日HIITを行うことには無視できないデメリットや注意すべき点が存在します。むしろ、こちらの方が重要かもしれません。
高強度トレーニングの連続は、体に予想以上の負担をかけることがあります。
オーバートレーニングのリスク
毎日激しい運動を続けると、筋肉や神経系の回復が追いつかなくなることがあります。これがオーバートレーニングの状態です。
・慢性的な疲労感: 十分寝ても疲れが取れない
・怪我のリスク増: 疲労でフォームが崩れやすくなる
・免疫力の低下: 風邪をひきやすくなる
・精神的な不調: イライラする、集中力が続かない
これらのサインが見られたら、オーバートレーニングを疑う必要があります。
怪我のリスクが非常に高い
疲労が蓄積すると、正しいフォームを維持することが難しくなります。
特にHIITのような素早い動きや爆発的な動きを伴う種目では、フォームの乱れが直接的な怪我(肉離れ、捻挫、関節痛など)につながる危険性が高まります。
精神的な燃え尽き
毎日「全力」を出すことを自分に課すと、精神的に疲弊してしまうことがあります。
「やらなければ」という義務感が強くなりすぎると、トレーニングが楽しくなくなり、最終的に燃え尽きてしまう(バーンアウト)可能性も考えられます。
注意点:休息の重要性
筋肉は休息中に回復し、成長します。毎日同じ部位に高強度の刺激を与え続けると、回復が間に合わず、筋肉の成長どころか、分解が進んでしまうこともあり得ます。
適切な休息日を設けることは、トレーニング効果を高める上で不可欠です。
注意点:フォームの確認
特に毎日行う場合は、一回一回のフォームの正確性がより重要になります。疲れていても正しいフォームを意識し、難しい場合は強度を落とすか、その日のトレーニングを休む勇気も必要です。
毎日HIITを行う場合は、これらのデメリットと注意点を十分に理解し、慎重に進める必要があります。
毎日HIITを行う場合の頻度と強度
では、もし「毎日HIITを取り入れたい」と考えた場合、どのように頻度や強度を調整すれば良いのでしょうか。ここでは、安全かつ効果的に行うための考え方を紹介します。「毎日=最高強度」ではない、という点がポイントです。
頻度:「毎日」の定義を見直す
「毎日HIIT」と言っても、毎日最大強度で行うことは、ほとんどの人にとって推奨されません。代わりに、以下のようなアプローチが考えられます。
・強度を変える
週に2〜3日は高強度のHIIT、他の日は低強度〜中強度のHIITや、軽い有酸素運動、ストレッチなどのアクティブレスト(積極的休養)にする。
・部位を変える
全身を使うHIITばかりではなく、日によって上半身中心、下半身中心など、負荷がかかる部位を分散させる。
・時間を短くする
毎日行う代わりに、1回のトレーニング時間を5分程度に短縮する。
このように、「毎日何かしらの運動をする」という枠組みの中で、HIITの強度や内容を調整するのが現実的です。
強度の調整:その日の体調に合わせる
HIITの強度は、運動の種類、運動時間と休息時間の比率、セット数などで調整できます。
・運動時間と休息時間の比率
疲れを感じている日は、運動時間を短くしたり、休息時間を長くしたりします。(例:20秒運動/10秒休 → 20秒運動/20秒休)
・セット数
いつもより少ないセット数で終える。
・運動の種類
ジャンプ系など衝撃の強い種目を避け、負荷の低い種目を選ぶ。
・自覚的運動強度(RPE)
自分の感覚で「今日のきつさ」を判断し、無理のない範囲(例えば10段階中7〜8程度)に抑える日を作る。
「毎日必ず全力で!」と決めつけず、その日の体調や感覚に合わせて柔軟に強度を調整することが、継続と安全のために非常に大切です。
毎日できるHIITメニュー例
ここでは、比較的負荷が調整しやすく、毎日(あるいはそれに近い頻度で)行うことを想定したHIITメニューの例をいくつかご紹介します。ただし、これらはあくまで一例です。
ご自身の体力レベルやその日の体調に合わせて、種目、時間、セット数を調整してください。
全身を使った基本メニュー例(強度:中)
以下の種目を順番に行います。各種目20秒間行い、10秒間の休憩を挟みます。これを1サイクルとし、2〜4サイクル繰り返します。
・マウンテンクライマー: 腕立て伏せの姿勢から、片足ずつ交互に膝を胸に引き寄せる。
・スクワット: 肩幅に足を開き、お尻を後ろに引くように膝を曲げる。
・プランク: 肘とつま先で体を支え、一直線を保つ。
各種目をリズミカルに行い、心拍数を上げることを意識しましょう。プランクは動きが少ないですが、体幹をしっかり使う種目です。
下半身中心メニュー例(強度:中〜高)
下半身の筋肉を中心に刺激するメニューです。各種目30秒間行い、15秒間の休憩を挟みます。これを1〜3サイクル繰り返します。
・ランジ(左右交互): 片足を大きく前に踏み出し、膝を曲げる。左右交互に行う。
・スクワットジャンプ: スクワットの姿勢から軽くジャンプする。
・カーフレイズ: かかとを上げ下げして、ふくらはぎを鍛える。
ジャンプ系の種目は強度が高めなので、膝や足首に不安がある場合は、ジャンプなしのスクワットなどに変更しましょう。筋肉への刺激を感じながら行うことが大切です。
上半身・体幹メニュー例(強度:中)
上半身と体幹をターゲットにしたメニューです。各種目30秒間行い、15秒間の休憩を挟みます。これを1〜3サイクル繰り返します。
・プランクジャック: プランクの姿勢で、両足を揃えたり開いたりする。
・バイシクルクランチ: 仰向けになり、自転車を漕ぐように脚を動かしながら、対角線の肘と膝を近づける。
・スーパーマン: うつ伏せになり、両手両足を同時に床から浮かせる。
正しいフォームで行うことが重要です。特にプッシュアップやプランクでは、腰が反ったり丸まったりしないように注意しましょう。腹筋や背筋を意識して動作することがポイントです。
これらのメニュー例は、あくまでも基本的な組み合わせです。慣れてきたら時間を延ばしたり、種目を変更したりして、自分に合ったプログラムを見つけてください。
毎日HIITを続けるためのポイント
毎日、あるいは高い頻度でHIITを続けることは、意志の力だけでは難しいものです。怪我なく、モチベーションを保ちながら続けるためには、いくつかのコツがあります。
計画的な目標設定と休息の重要性
毎日HIITを続けるには、まず現実的な目標を立てることが大切です。「毎日必ず!」と意気込みすぎると、できなかった日に挫折しやすくなります。
「週に〇日頑張る」「まずは2週間続けてみる」といった達成可能な目標から始め、クリアできたら自分をしっかり褒めてあげましょう。
そして、同じくらい重要なのが「休む」という考え方です。「毎日やらなきゃ」というプレッシャーは禁物。体が疲れている時や気分が乗らない時は、思い切って休む勇気も必要です。
質の高いトレーニングのためには、適切な休息が欠かせません。
記録とメニュー工夫でモチベーション維持
日々のトレーニング内容(いつ、どんなメニューを、どれくらいの強度で)を記録しておくと、自分の頑張りや成長が見えやすくなり、モチベーション維持につながります。
体調の変化をメモしておけば、体のサインに早めに気づく助けにもなります。
また、毎日同じメニューでは飽きてしまうことも。全身、下半身、上半身など、日によって鍛える場所を変えたり、新しい種目に挑戦したりと、メニューに変化をつけることで、トレーニングが新鮮で楽しいものになります。
仲間との交流で継続を後押し
一人で続けるのが難しいと感じたら、友人や家族を誘ってみたり、SNSなどでトレーニング仲間を見つけたりするのも良い方法です。
一緒に頑張る仲間がいると、励まし合ったり、情報を交換したりできて、トレーニングがより楽しく、続けやすくなることがあります。
これらのポイントを参考に、無理なく楽しくHIITを日常に取り入れていきましょう。
体の声を聞くことの重要性
毎日HIITを行う上で、何よりも大切なのは「自分の体の声に耳を傾ける」ことです。高強度なトレーニングは、知らず知らずのうちに体に負担を蓄積させている可能性があります。体のサインを見逃さないようにしましょう。
疲労や痛みのサインを見逃さない
以下のようなサインが現れたら、無理せず休息を取るか、トレーニングの強度や頻度を見直す必要があります。
・寝つきが悪い、または寝ても疲れが取れない
・安静時の心拍数が普段より高い
・トレーニング中のパフォーマンスが低下している
・特定の部位に 지속的な痛みや違和感がある
・気分が落ち込む、イライラしやすい
これらは、体が「休みが必要だ」と送っているサインかもしれません。
「筋肉痛」と「怪我の痛み」の違いを知る
トレーニング後の筋肉痛は、筋肉が成長している証拠とも言えますが、鋭い痛みや関節の痛みは怪我の可能性があります。
筋肉痛であれば、軽い運動やストレッチで和らぐこともありますが、動かすと痛みが悪化する場合や、腫れや熱を持っている場合は、トレーニングを中止し、必要であれば専門医に相談しましょう。
休息日・軽い運動の日を計画的に設ける
「毎日HIIT」を目指す場合でも、完全な休息日や、ウォーキング、ヨガ、ストレッチといった軽い運動で体を回復させる日(アクティブレスト)を計画的にスケジュールに組み込むことが賢明です。
これにより、怪我のリスクを減らし、長期的にトレーニングを継続することが可能になります。
自分の体と対話しながら、その日の状態に合わせた最適な選択をすることが、安全かつ効果的に目標へ近づくための鍵となります。
まとめ 毎日HIITで理想の体へ
今回は、HIITを毎日行うことについて、そのメリット、デメリット、注意点、そして実践的なアドバイスを解説してきました。
HIITは短時間で高い効果が期待できる魅力的なトレーニングですが、その分、体にかかる負荷も大きいことを忘れてはいけません。
毎日「最高強度」のHIITを行うことは、オーバートレーニングや怪我のリスクを高めるため、基本的には推奨されません。
もし毎日運動習慣をつけたいのであれば、HIITの強度を日によって変えたり、軽い有酸素運動やストレッチなどを組み合わせたり、休息日を設けたりするなど、柔軟なアプローチが必要です。
最も大切なのは、常に自分の体の声に耳を傾け、無理をしないこと。疲労や痛みを感じたら、勇気を持って休むことが、結果的に目標達成への近道となります。
この記事を参考に、ご自身の体力レベルやライフスタイルに合わせて、安全かつ効果的にHIITを取り入れ、理想の体を目指してください。